Bayt/Kato Hideki's Green Zone

 Green Zoneのメンバー、加藤英樹、大友良英と植村昌弘の3人はGround-Zeroのオリジナル・メンバーでもある。加藤がニューヨークに来て十数年経ったが、今でも彼らは稀に演奏をともにしている。このCDはGreen Zoneの2作目で、新しいレーベルDisc Callithumpからのリリース。加藤は彼のもうひとつのトリオ、Death Ambient(加藤英樹、モリ・イクエ、フレッド・フリス)の主宰者でもあるが、近年、特にDeath Ambientの3作目と本作では、ベースの他にも多くの楽器を使用し、幅広いテクスチャーやサウンドを作り出している。一方、普段ギターやターンテーブルを持ち替えて演奏する大友は、ここではギターのみに専念している。
 トラック1「Bayt」は45分半で、イントロは大友の硬質なギター・ソロから始まる。彼のこのような演奏を聴くのは久しぶりである。このソロに続くのは沸々とした加藤のベース・ソロ、そしてドラムスがサスペンスを加える。加藤の催眠術をかけるかのように繰り返されるベース、弦を擦って不気味な音を作りだす大友とともに、植村のマレットを使った演奏が非常に効果的である。サスペンスと音量はゆったりとしたペースで徐々に盛り上がる。大友は時間をかけながら、ストーリーを語るかように、味わい深い、素晴らしいソロを展開する。まるでマカロニ・ウェスタン映画のサウンドトラックを彷彿とさせるような演奏だ。大友は激しく弦をチョーキングさせながら、驚くべきメロディーを奏で、ギタリストとしての才能を見せつける。ある意味で、彼の演奏はニール・ヤングの原始的でパワフルな演奏を思い起こさせる。ドラマーの植村も素晴らしい演奏をしており、この作品に最適なミュージシャンである。「Bayt」の曲全体は長いが、よく考えて構築されているので、聴き手は曲が展開するにしたがって音楽の旅へと引き込まれてゆく。トラック2の「Zulal」はわずか5分間に少しずつ変化してゆく、ゴーストを思わせるかのようなドローンの曲。このGreen Zoneによる傑作のエンディングとして完璧な内容といえるだろう。

ブルース・ギャランター(ダウンタウン・ミュージック・ギャラリ- NYC)